都市伝説解体センター 感想 最新のオカルトミステリーとどうしても気になる点
都市伝説解体センタークリア、時間は15時間ほど。
人には見えないものが見える少女、福来あざみが奇妙な噂を解決する「都市伝説解体センター」の調査員として様々な事件を調査していく。
オカルト×ミステリーは個人的に大好物なので気になっていた。
ゲームでは奇妙な事件に遭遇した人々から依頼を受け、それらの奇妙なオカルト現象をSNSでの調査、現場調査を駆使して「解体」していく。 オカルトとミステリを組み合わせた物語は科学や警察の力が強くない過去の時代を舞台にしたものが多く、現代社会を扱ったものはあまり知らないのだが、本作ではSNSでの炎上を物語の根幹に据え、オカルトを現代社会でうまく扱っている。
以下、ネタバレありの感想。 上述した通り、現代社会を舞台としたミステリに都市伝説を組み込んだ意欲作。
オカルトに思える超常現象を解体していき合理的な説明を与えるあの興奮を自分の手で行えるというのはやはり気分がいい。謎解きはかなり簡単な部類だが、それについては意図的なものだろう。
好きな話は第3話、「応募方法は不明で突然DMが届き参加できるオカルトスポット巡りツアー」というものだが、参加した時点のノリがとてもそれっぽい。オカルト好き、webライター、なんかいかつい人などが「なんか面白そうなので来た」というノリで集まる。司会者もいかにもそれっぽい(後安っぽい)服を着て、そしてなんかそこまで難しくないレクリエーション謎解きをやらされていくのだが、スポットを進んでいくと登場人物たちの険悪さが増していき、引き返せない深淵に踏み込んでいく。 あと「異界からの帰り方は来た道を戻ること」という情報を与えたうえで用意するのが動かなくなるエレベーターだというのがとてもよかった。
また主人公の福来あざみも、エンディングまでプレイするとかなり不気味な存在になる。「全国紙に載る有名な事件を知らない」「学生のはずだが私生活が一切描写されない」などから、人工的な存在なのだろうとは思っていたが、実態からしてセンターの調査員をやってる間以外ほとんど存在しないのではなかろうか。廻屋はあざみが表に出ているときでも脳内の解体センターの中を歩き回ることができそうだけれど。 あざみの誕生過程について、富入は「歩が作った」と発言しているが、歩本体の自我が作中でもまるで出てこないし、復讐計画を進める中で自然発生した人格だと考える方がしっくりくる。廻屋のほうはほとんど歩そのものというか、歩の演技でも驚かない。ジャスミンしかいなかった頃は彼女に監視デバイスをつけたり周囲の監視カメラをハッキングしたりしてたのだろうか。してそう。
そして最終話において、これまで解いた事件が1本に収束していく。巨大な陰謀論に見せかけた物語が最初から最後まできわめて個人的な復讐劇としてまとめたのは純粋に見事だったし、なにより演出と盛り上がりが素晴らしいが、特に終盤に行くにつて気になる点がいくつも出てくるのはやはり難点。
まず第5話の黒沢が遭遇したドッペルゲンガー、あのとき以外のドッペルはジマーたちの虚言で、画像も合成だろうが、あれだけは実在している。如月歩(あるいは廻屋)の変装なのだとしても、変装技術があることは明かされていない(廻屋とあざみは同一人物なわけだが、あれは表情や髪形、しぐさなどから受ける印象がまるで異なるという話であって、顔を作り変えているわけではないだろう)、また目が人形のようで異常、という話が出るのだが当然そのトリックの説明もない。あざみが出会ったドッペルは夢の中の存在なわけだし。 ここで黒沢がHDDを保管しているのが不自然、という話もあるが、こっちは自衛のためだろう。元5ソサエティのメンバー、黒沢以外明らかに人生上手くいってないし、彼らの人間性はお互いが一番よくわかってそうなので。
それとジャスミンが見たものについて。廻谷本人は歩けるのであの場にいても問題ないのだが、そうするとジャスミンと(あざみが)別れた後車に乗ったジャスミンより早く現地につく必要がある。不可能ではないが面倒だし、人形でもなさそうなのでやはりジマーの替え玉なのだろう。しかし仮面の下を見て0枚目とつぶやくということはその下に0とでもかいたのか(新しい図柄を書いたら0枚目ではなく7枚目と思いそう)。どちらかというとイルミナカードの新しい絵柄に0が付記されていた、あたりが自然なところだろうか。
そして一番気になるのは如月歩の計画が明らかに如月務の名誉を棄損していること。復讐計画の過程でどうしても人手がいるし、人を扇動する必要があるのはわかるのだが、わざわざ如月務の名前を出すのはなぜなのか。彼が炎上による注目も、教祖としての崇拝も忌み嫌っていそうなのはわかっていると思うのだが。もう一度彼の存在を思い出させたうえで真実を明らかにして少しでも過去を顧みさせようとした、と考えるのが一番良心的な解釈だが、だとしても作中で補足がないのは気になる。
歩の復讐計画について考えると、ナターシャサイン開発時点でハッキングによる強制個人情報アップロードは可能、5ソサエティについては元からわかっていた。なので残りは事件をクローゼット送りにした警察への復讐になる。 確かに警察への復讐はほか二つと比べるとかなり難易度が高い。それもハッキング不可能なクローゼットの存在を明らかにしないといけない。そうなると自分で事件を起こして警察の出方をうかがい、機会を見てあざみとしてクローゼットに侵入する、という計画なのだろうか。あざみは自然発生した人格、という考えを推しているのであざみが生まれた時点で計画を変更したのかもしれない。
今回の復讐計画で、直接的な犯人である5ソサエティへの復讐を果たし、一般人への復讐もなした。しかしクローゼットの存在を知ったものの、それは世間の目にさらさされることもなく、相変わらず存在する。そして一般人たちもすぐにこのことを忘れ、日常に回帰していく。 海外に生まれた新しいセンターはクローゼットに収まらない新しい事件を企んでいるのだろう。
ミステリとしてみると、あちこちに説明されないトリックが残ることや最後の大オチもセンター長からの電話はどうしていたのかなど違和感があるのはかなり気になる。それでも現代社会とオカルト、ミステリを見事に融合させ、復讐劇として完成されたシナリオはとてもよかった。 ぜひ次回作にも期待したい。