無名祭祀 感想
ロバート・E・ハワードのクトゥルフ神話集、「無名祭祀」を読み終えた。
「剣と魔法の時代」というものを生み出した人物の一人であり、生前ラヴクラフトとも親交があったロバート・E・ハワードが書いたクトゥルフ神話ものを一冊にまとめたもの。ボリュームは驚異の600ページ越え。
主に剣と魔法の時代ものと、現代伝奇もの(とはいえ書かれたのが100年近く前なのでその時点での「現代」だが)に分けられる。
剣と魔法の時代ものでは「ハイボリア時代」というハワードの代表的なシリーズ「蛮勇コナン」(未読です)や古代ローマ時代、バイキング時代などにうごめく太古の怪物が、現代伝奇ものでは20世紀アメリカ、ヨーロッパで起こる奇妙な出来事を描いている。
もともと強い男性が敵を倒す、ヒロイックな物語を書いている人物であるだけあり、ラヴクラフトの陰鬱とした物語と比較して邪悪な妖術師との対決や怪物に立ち向かう人間など、などより分かりやすく力強い物語になっている。
クトゥルフ神話TRPGなどの昨今のクトゥルフ神話ものの源流はこちらの影響もあるのかもしれない。
以下ネタバレ全開
個人的なお気に入りは「大地の妖蛆」復讐のため異界の存在を利用しようとするものが主人公というのが面白い。「スカルフェイス」は中編といえる長さで、ロンドンに潜む悪の妖術師と対決するというクトゥルフ神話とサスペンスを掛け合わせたような作品。最近だとシャーロックホームズとクトゥルフ神話のパスティーユがでていたがその源流のような話だろうか。
「放浪者倶楽部奇譚」は同じ登場人物たちが様々な奇怪な事件に遭遇する半連作短編のようなもの。「黒の碑」は太古の城の尖塔が碑だと思われているという設定がかなり好き。
また、「ネクロノミコン」の著者が長い時間を過ごした古代都市を探す「アッシュバニパルの炎」など、実際にラヴクラフトとやり取りをしていた人間ならではのライブ感のある話も多い。
全編通して、クトゥルフ神話がラヴクラフトから広がり、様々なジャンルへと派生していく第一歩のようなものがわかった気がする。また本の物理的な分厚さに比べて読みやすい話が多いので意外とあっさり読むことができた。
「蛮勇コナン」は名前を知っているだけでまだ読んでいないのだが、手に取ってみたくなった。